第7章 レクイエム
あの日の学校帰り、俺は彼を自宅に招いた。
高校最後の夏休みを前にした、茹だるような暑い日だった。
夏休みを満喫するため、山のように出される課題を、2人で手分けして早急に終わらせるのが目的だった。
締め切った部屋のドアを開けると、籠った熱気が身体に纏わりついた。
じっとしていても汗が次から次へと噴き出してくる。
「ちょっとだけ我慢して、すぐエアコン効いてくると思うから」
智くんにタオルを手渡し部屋を出た俺は、階下へ降り、キッチンに向かった。
綺麗に整頓された食器棚からグラスを二つと、冷蔵庫からスポーツドリンクのペットボトルを取り出した。
それを手に部屋に戻ると、エアコンの真下に立ち、冷たい風を受けながら、タオルで汗を拭う智くんの姿があった。
細い首筋がとても綺麗で、
「智くん、ジュース飲むでしょ?」
そう言って触れたい欲望を誤魔化した。
「うん、ありがとう。もう、喉カラッカラだよ」
笑ったその顔に、もう汗は浮かんでなかった。
グラスにスポーツドリンクを注ぎ、智くんに手渡す。
受け取った智くんはグラスを傾け、それを一気に喉に流し込んだ。
飲み込み切れなかったスポーツドリンクが唇の端から溢れ、顎を伝って首筋、そして開襟シャツからチラリと覗く胸元へ落ちた。
喉元で上下する喉仏がやけに色っぽい。
「ぷはぁ~、生き返る」
ドクドク脈打つ鼓動を落ち着かせるように、俺も智くんの真似をしてグラスを傾けた。
「ホントだ、マジ生き返る」
でしょ、って笑う智くんの笑顔がとても好きだ。