第7章 レクイエム
彼のクラスは偶然にも俺のクラスの隣で、学校行事の際には何かと合同で活動することも少なくなかった。
そんな中で俺達の距離が近くなるのは、ごく自然にの流れだった。
“大野くん”と“櫻井くん”の関係から、
“智くん”と“翔くん”と呼び会える関係になった時、俺の胸に甘酸っぱい感情が湧いた。
智くんが“翔くん”と呼ぶ度、俺の胸は高鳴った。
そして偶然触れた指先。
ごめん、と言って引っ込めようとした彼の手を、俺の伸ばした手が捕らえた。
「好きだよ」
不意に口をついて出た言葉に、彼は顔をほころばせ、
「ありがとう」
と、言ってくれた。
どちらともなく引き寄せられた互いの唇。
そして触れるだけの、幼い口付け。
お互い恥ずかしくて、手を握ったまま顔も合わすことも出来ず、、ただ赤い顔を隠すように俯くしかなかった。
俺にとっても、
そして智くんにとっても、それは初めての恋だった。
そりゃ些細な事で喧嘩をした事だってあった。
俺が一方的に怒って一週間口をきかない時だってあった。
でも、いつだって智くんは変わらず、俺の気持ちが落ち着くまで待ってくれた。
甘酸っぱい、でも時に苦い…
智くんと過ごしたとても幸せな時間だった。
あの日、あの瞬間までは…