第7章 レクイエム
俺が初めて彼を意識するようになったのは、多分高校の入学式だった、と思う。
皆同じ真新しい制服を身に付け、退屈な話に耳を傾ける振りをする中で、彼だけは堂々と居眠りをしていた。
一目惚れ、ってのが本当にあるのなら、あの瞬間俺は彼に一目惚れをしたんだと思う。
あまりに気持ち良さそうに眠る横顔がとても穏やかで、綺麗だった。
俺は彼から目が離せなくなっていた。
彼はどんな顔をしている?
どんな顔で笑う?
振り向いて欲しくて、眠る横顔に無心で視線を送り続けた。
そして思いは通じた。
彼の瞼がゆっくり開き、そっとこちらを振り向き、視線が絡んだ瞬間向けられた笑顔。
心臓が鷲掴みにされたように痛んだ。
そして次々沸き起こる感情。
彼の声を聞きたい。
彼に触れたい。
彼の名前を知りたい。
欲望だけがどんどん膨れ上がっていった。
そして漸く知った彼の名。
彼の名は“大野智”。