第5章 ◇8/10Birthday(ラビ)
✣
キスしたのはオレが悪いと思ってる。
こっち方面で理性なんて今まであんま働かせてこなかったから、つい出た小さな欲は簡単にオレの体を動かしてしまった。
そこはオレが悪いさ。
うん、ほんと悪いと思ってる。
…でもさ。
そーいう顔で、そーいうこと言うなっての…。
ほんと、オレの理性試されてる気がしてなんねぇんだけど。
「…ずりぃよな、ほんと」
「何が」
惚れた者の負けとか言うけど。
ほんと、その通りだと思う。
こんなに好きになっちまったから、南の言動一つに一喜一憂して。
こんなに大切に思うから、仕方ないかって思っちまう。
「南の存在が」
「…私全否定?」
「うん」
「うんって!」
うん、だから。
「だから今日はオレのもんでいて。オレの為の存在でいて」
「ぇ…あっ」
南の手首を掴んで、そのままぐいと引き寄せる。
唐突な動きにバランスを失った体が傾いて、触れる体を抱き止めた。
オレのプレゼントだって、本人も公認してたし。
いいよな今日くらい。
「今はオレのことだけ考えてて」
他の誰も入り込む隙間のないくらい。
今日くらい、南を丸ごと全部独占したっていいよな。
理性との戦いだけど…まぁ、精神的に大人になる為の第一歩だとでも思えば。
この甘くて苦い想いも、全部受け入れてやるさ。