第5章 ◇8/10Birthday(ラビ)
「ら、ラビ…」
「ほんっとごめん! マジでごめん! 今のは熱に浮かされた事故みたいなもんで…!」
「ちょ、ちょっと」
頭を地面に押し付けて捲し立てるように謝罪するラビに、逆にこっちの気が削がれてしまう。
…何もそんなに謝らなくても。
……ん?
あれ、私……そんなに気にしてない?
もしかして。
「……」
確かに、あの泣き黒子のノアに無理矢理キスされた時と比べれば、ラビのキスは嫌悪感なんてなかったって思ってたけど。
……今回の触れるようなキスも、驚きはあったけど嫌な気はしなかった。
それよりも…花火の光で照らされるラビの鮮やかな髪に目を奪われて…あの時、一瞬私の時間は止まっていた。
「気が済むまで殴ったっていいから!」
「ま…待って待って」
未だに土下座し続けるラビに、屈んでその肩に触れる。
「もう、謝らなくていいから。顔、上げて」
落ち着いた声で促せば、怒ってないことは伝わったのか。
口をぎゅっと結んで、恐る恐る顔を上げるラビと目が合った。
まだ花火は続いてる。
どぉん、と鳴る音に照らされるラビの顔。
眉を下げて、罪悪感に満ちた顔。
…胸が少しだけツキンとする。
キスされたことよりも、そんな顔をさせてしまったことの方が気にかかってしまって。
「…怒ってないよ」
だから優しく声をかけた。
「吃驚したけど…怒ったりしてない」
「…ほんとさ?」
「うん」
触れるだけの優しいキス。
ラビが言ったように、真夏の事故みたいなキス。
それ一つでわーわー騒ぐ程、私は子供じゃない。
…それにぶっちゃけ、それ以上のキスをラビにはされたことあるし。
それを思えば……うん。
なんか、思い出して照れる。