• テキストサイズ

廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第5章 ◇8/10Birthday(ラビ)



「ら、ラビ…」

「ほんっとごめん! マジでごめん! 今のは熱に浮かされた事故みたいなもんで…!」

「ちょ、ちょっと」


 頭を地面に押し付けて捲し立てるように謝罪するラビに、逆にこっちの気が削がれてしまう。
 …何もそんなに謝らなくても。

 ……ん?
 あれ、私……そんなに気にしてない?
 もしかして。


「……」


 確かに、あの泣き黒子のノアに無理矢理キスされた時と比べれば、ラビのキスは嫌悪感なんてなかったって思ってたけど。
 ……今回の触れるようなキスも、驚きはあったけど嫌な気はしなかった。
 それよりも…花火の光で照らされるラビの鮮やかな髪に目を奪われて…あの時、一瞬私の時間は止まっていた。


「気が済むまで殴ったっていいから!」

「ま…待って待って」


 未だに土下座し続けるラビに、屈んでその肩に触れる。


「もう、謝らなくていいから。顔、上げて」


 落ち着いた声で促せば、怒ってないことは伝わったのか。
 口をぎゅっと結んで、恐る恐る顔を上げるラビと目が合った。

 まだ花火は続いてる。
 どぉん、と鳴る音に照らされるラビの顔。

 眉を下げて、罪悪感に満ちた顔。
 …胸が少しだけツキンとする。
 キスされたことよりも、そんな顔をさせてしまったことの方が気にかかってしまって。


「…怒ってないよ」


 だから優しく声をかけた。


「吃驚したけど…怒ったりしてない」

「…ほんとさ?」

「うん」


 触れるだけの優しいキス。
 ラビが言ったように、真夏の事故みたいなキス。
 それ一つでわーわー騒ぐ程、私は子供じゃない。

 …それにぶっちゃけ、それ以上のキスをラビにはされたことあるし。
 それを思えば……うん。

 なんか、思い出して照れる。

/ 723ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp