第5章 ◇8/10Birthday(ラビ)
重力に従って落ちていく体。
衝突を予感して条件反射で強く目を瞑る。と同時に、遠慮のない強い腕に抱きしめられた。
がくんっと揺れる体。
感じていた浮遊感が一気に消える。
「っ……せ、セーフ…」
耳元で聞こえたのは、焦りが滲んだラビの声。
恐る恐る目を開ければ、私の体を片腕で抱いて、もう片手で鳥居を掴んでぶら下がっている姿が見えた。
た、助かった……って腕力すごっ!
「…あ。駄目だ、落ちる」
「えっ」
「悪い、南」
「ちょっと待…っ!」
私を片腕で抱いたまま、鳥居の上に上がるのは無理だったのか。それとも潔く諦めただけなのか。
サラリとそんなことを口にすると私の静止も聞かずに、ラビはぱっと呆気なく鳥居から手を離した。
あっさりとそのままラビと共に、真下に落下する体。
急に襲い来る二度目の浮遊感にぎゅっと目を瞑る。
──のも、一瞬。
すとんっ
そんな呆気ない音を立てて、ラビは私の体を抱いたまま地面に着地した。
着地する直前に、ぎゅっと抱く腕が強くなる。
強く抱かれた体は然程衝撃もなく、気付けば鳥居の下にいた。
…こんな高い鳥居の上から、猫みたいに着地できるなんて。
本当、エクソシストって凄い。
「大丈夫さ?」
「…ぅ、うん…」
そっと地面に下ろされる。
足が地面をしっかりと確認すると、なんだかどっと安心感が襲ってきた。
それでも急な落下でまだ心許ない足腰に、目の前のラビの腕から手を離せずにいると。
ぱっと、先にその手を離して距離を取ったのはラビの方。
…え?
見れば、体を離してぐっと唇を噛み締めて──
「ゴメンナサイ!!」
がばっと。
それはもうがばっと、勢いよくその場で土下座した。
…え、ちょっと。