第5章 ◇8/10Birthday(ラビ)
どんっと鳴っては、ぱらぱらと落ちていく。
一瞬の輝きの連続が目を捉えて離さない。
儚いもの程美しい、だなんて誰が言ったんだっけ。
でもこういうもんを見てると、強ち間違ってないよなぁと思う。
一瞬しか形を成さないものだから、目を惹き付けて離さないのか。
「綺麗だねー…」
まさにオレも思っていたことを口にする
そんな南に、そうさねと賛同しようと目線を変えて。
「……」
思わず口を噤んだ。
どぉんっと鳴る。
音に合わせて散る光が、南の顔を照らしていく。
一瞬の強い光が見せるのは、空に目を奪われている南の横顔。
真っ暗で吸い込まれそうな瞳に反射して映る、散り輝く花火の光。
綺麗だと思った。
花火が光り輝いたその一瞬だけ、オレに魅せる南の横顔が。
目を惹き付けて離さない程に、魅入ってしまった。
…多分いつもと違う姿をしていたってのも、あるんだろうけど。
いつもと違う南の姿。
いつもと違う国の世界。
そういうオレからすれば非日常的なものは、気持ちを高揚させた。
ドクドクと心臓を速めて、どうしようもなく体を熱くする。
「…ラビ?」
南を支えていた手に微かに力が入る。
その動作で気付いたのか、返事のないオレに疑問を感じたのか。
花火からオレに目を向ける南に、視線が絡む。
どぉんっと鳴る。
音に合わせて散る光が、南の顔の後ろで花咲く。
真っ直ぐにオレを見てくるその顔を、背後で鮮やかに飾るように。
…そんな目の前の景色に、口は自然と開いていた。
「…ほんと、綺麗さ」
──南が。
その言葉は最後まで音にはならずに止まる。
目の前の光景に誘われるように、勝手に体は動いて。
花火の逆光で、光と影で織り成す南の顔ははっきりとは見えなかった。
──けれど。
言葉を紡ぐのを止めた唇が触れたのは……確かに目の前の、柔らかな肌だった。