第5章 ◇8/10Birthday(ラビ)
「大丈夫だって。ちゃんと座って見られる場所に行くから」
「何それ、どこ──…わっ」
「ってことで、掴まってろよ」
「ま、待ってまだ良いって言ってな…!」
もたもたしてたら、花火が始まっちまうだろ?
顔を青くしてる南には悪ィけど、文句なら後で沢山聞くからさ。
話途中の南の背中と膝に腕を回して、ひょいと体を抱き上げる。
そのまま巨大化させた鉄槌の柄を握って、槌の上に足をかけた。
「"伸"っ」
「っ!」
返事も待たずに発動させた鉄槌に、デンケ村の時のことを思い出してか。ぎゅっと強く抱き着いてくる体。
でもデンケ村の時とは違って、鉄槌はほんの少しだけ柄を伸ばすとすぐに止まった。
「ほい、到着」
「…え?」
時間で言えばほんの一瞬。
トンと目的の場に足を下ろして、抱いていた南も同じに下ろしてやる。
固い足場に下ろされるとは思っていなかったんだろう。
驚いた顔で目を開いた南が、きょとんと辺りを見渡したかと思えば──
「っ!?」
「っと…南?」
…わお。
抱き付かれました。
「な…っ此処…鳥居の上…ッ!?」
「おう。此処ならゆっくり座って高みの見物できるだろ?」
「そ、そんな面積ないから…! 踏み外して落ちるから!」
「大袈裟さなぁ、南は。普通に座ってりゃ落ちねぇし、万が一落ちても平気だってこの高さなら」
「それはラビ限定だから! もしくはエクソシスト限定! 私、一般人!」
照れ屋な南がそんなこともお構いなしに、ぎゅーっと強く抱き付いてくる。
本気で怖いんだろう、その体はぷるぷると微かに震えていた。
確かに鳥居の上だから、足場の面積は狭いけど…座ったら平気だってコレ。
「大丈夫だって、オレがいるから」
「だからってエクソシストの感覚で引っ張り回すのやめてくれませんか…っ」
…そんなに高ぇかな?
いつも鉄槌使って移動してるオレからすれば、寧ろ低い方なんだけど…南の感覚じゃかなりの高さらしい。
…んー…
……なら、仕方ねぇ。