第2章 ◇恋の始まり(ラビ)
「ふぁ…なんで、ラビが…おはよ…?」
ふわり、ふわり。
甘い声でオレを呼ぶ。
その声一つ一つに胸は変に騒いで、顔の熱さは増した。
うわ…なんか……ちょっと、やべぇかも。
「……寝惚けてんなさ。此処、自室じゃねぇけど。書庫だけど」
顔を引っ込めて南から距離を置く。
自然に見えるように顔を背けて、目を逸らした。
「へー、書庫…──えっ!?」
ぼんやりとした声から、一気に覚醒したような声。
ちらりと目を向ければ、慌てて辺りを見渡す南が見えた。
よかった、いつもの南さ。
思わずほっとして背けていた顔を戻す。
…ん? なんでオレほっとしたんさ?
いつもの南って…ずっといつもの南だろ。
「やば、寝てた…ッい、今何時…っ」
「21時前さ」
「あ、まだそんなもの? よかった…」
ほーっと大きく安堵の息をついて、南が安心した笑みを見せる。
この様子じゃ、あんまり寝落ちてなかったんか。
…てことは、そんな遅くまでまた残業やってたんさ?
「ラビ、見つけてくれたの? ありがとう」
相変わらずの仕事中毒さに若干心配していると、不意に南が笑顔を見せた。
そんな笑顔にまた胸の奥がドキリとする。
「…偶々さ」
なんで。
いつもの南だろ。
なんも変わらない。
なんでドキッとしてんだよ、オレ。