第17章 初恋がロリコン男である件について【バク】
「な…何言ってんの…!馬鹿なこと言わないでッ」
かと思えば、堰を切ったように慌てて捲し立てた。
「無理矢理に気持ちを押し殺してどうするのよッそんなのバク自身を殺すのと同じでしょッ」
「む。だ、だがそうしないとミアが…」
「もっと他にも方法あるでしょ!あんた頭は良いんだから!」
逃げ場を奪う為に掴んだ腕なのに、逆にミアに圧倒されバクはぽかんとその顔を見続けた。
そして、唐突に理解した。
己の恋心を殺してまでミアがバクの手助けをしていたのは何故か、と問い掛けてきたフォーの言葉が。
(そうか…そうだった。これがミアだったな)
確かにそれは、バクのリナリーへの想いとは違っていたようだ。
盲目的に相手を見てはいないミアの瞳こそ、バクが望んでいたものであったことも。
「…なんでそこで笑うのよ」
「いや…ミアの言う通りだ」
ふ、と口元を緩めたバクの空いた手が、ミアの背に触れる。
「そうだな。長年抱いてきた想いだ…それを簡単に切り捨てることなんて、俺にはできそうもない」
「…わかってるわよ、そんなこと」
「だが、ミアのことも同じだ。それこそリナリーさんよりもずっと、長いこと俺の傍にいてくれた。今この手にある温もりを、俺は失いたくないと思っている」
「っそんなこと、言われたって…」
「ああ。だから、これは俺の我儘だ」
背に当てた手を引き寄せる。
一歩踏み出すミアの額に己の額をこつりと当てて、バクは力なく笑った。
「ミアとリナリーさんを、俺は天秤に賭けることができない。だが離れて欲しくないと思ったのは、ミアなんだ…傍にいてくれないか。ミアで俺の心が、埋まるくらいに」
そうすれば、いつかはきっと。
リナリーを純粋に尊敬する者として、見ることができるかもしれない。