第17章 初恋がロリコン男である件について【バク】
「偶には、周りに凭れて甘えてもいいじゃないか。それで回らないような仕事なら、その職場環境を変えるべきだ」
「バク……その甘えで回らなくなる職場だから日々走り回ってるんだけど?」
「う。」
「全ての元凶とは言わないけど、そんな職場環境にさせている理由にバクも関わっているんだけど?」
「ぐ。」
グサグサとミアの言葉が胸に突き刺さる。
反論できずにいるバクに、ふとミアは表情を和らげると息をついた。
「まあ、そんな人だってわかっててついて行ってるのも私だし、ね。今後に期待しておくわ、支部長」
カツリとヒールの踵を返す。
笑顔で告げられた支部長という言葉に、きゅっとバクは唇を今一度結んだ。
その笑顔は、先程までのものとは違う。
見たいと思っていたものではない。
墓穴を掘ってしまったのはわかっている。
それでもと、バクは声を荒げた。
「なら、ミアが甘えられるくらいの上司になる!それならどうだッ」
「…え?」
「お前が簡単に部下に責任を預けられないのは知っている。それなら、上司の俺を頼れ。つらいなら支えるし、弱音だって聞く。それなら、どうだ」
「…何、急に…」
先を歩んでいたミアの足が止まる。
驚き見返すその目に映る、幼馴染であった時も上司であった時も、見なかったバクの顔。
「だから…っ支部長なんて呼ぶのはやめろ」
「…は?」
驚きから困惑へ。
バクの言葉の意図が見えないと、ミアは今度こそ体を向き直らせた。
「なんで上司として頼れなのに、支部長呼びはするななの?意味がわからないんだけど」
「だから…ッ」
「何よ。ウォンみたいにバク様とでも呼べと?絶対嫌」
「だから!今までのお前を変える必要はないと言っているんだッ」
「? だから意味がよく───」
「変化を望むなら俺が変わる。だからお前は変わるな。そのままのミアで、傍にいろ」
強い眼だった。
一時も逸らすまいとして伝えてくるバクの気迫に押されて、ミアの口が閉じる。
「だから、今まで通り"バク"でいい。今まで通りのミアが、俺はいい」