第17章 初恋がロリコン男である件について【バク】
「今のは聞かなかったことにしよう。ミアは何処だ?」
支部長の命令が聞けないのか。
再度問えば、それでもハオは首を縦に振らなかった。
「上司の大事な私用ですので。支部長が相手でも他言できません」
「…僕も君の上司だぞ」
「ですが、僕はミアさん直属の部下ですので…すみませんっ」
がばりと頭を下げるハオのその姿勢に、聞き出すのは無理だと悟った。
が、そんなふうに頭を下げられたからと引き下がる訳にはいかない。
こっちだって決死の思いで足を運ん…今はそんなことどうでもいい!
あの仕事人間のミアが、人には言えないようなことをしているのか?
なんだそれは!
「今は仕事中のはずだ。その時間を私用に使うなど、それでも誇るべき上司かッ?」
「それをバク支部長が言いますか…?」
「それとこれとは別だ!」
今はそこから離れろ!
「とにかく、此処にミアさんはいませんし、帰りも遅くなります!また後日改めて顔を出して下さい!ミアさんにも伝えておきますから…ッ」
「むっ押すな…!」
強制的に背中を押されて、その場から退場させられる。
心底よく思うが、俺様はアジア支部の支部長だぞ。
皆自分がその部下だということを忘れてないかっ?
そう反論しようにも、目的の人物であるミアがいないのならどうしようもない。
結局そのまま、指揮官室を後にする羽目となった。
「───全く…ハオまでも僕にあんな態度を取るとは…一度、部下の在り方を改めさせなければならないな…」
文句を溢しながら、渋々と支部長室に戻る。
人が行き交う通路を行けば、すれ違う研究員達に声を掛けられた。
「あ、バク支部長じゃないですか」
「風邪治ったんですか?」
「元気になられて良かったです!」
見ろ、俺様だって人望はある。
上司として誇れるのは、ミアだけじゃないんだぞ。
「支部長、こんな所で何やってんスか?また仕事のサボりっスか」
「道、間違えないようにして下さいねー」
「あ!その先フォーの要塞補強工事中ですから!間違えても入っちゃダメですよ!」
…後半は聞かなかったことにしてやろう。