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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第17章 初恋がロリコン男である件について【バク】



古い記憶を辿っていけば、一番最初に"姉"のようなミアを感じるようになったのは、幼い頃。
よくアジア支部を探検して回っては、帰り道がわからなくなって迷子になっていた情けない記憶だ。
一人で泣きべそを搔いていると、何故かいつも最初に見つけてくれたのはミアだった。






"バクちゃん、みーつけた"






まるで隠れんぼの鬼のように、遊びの延長線上のような顔で笑って迎えてくれるから。
その笑顔を見る度にほっとして涙は引っ込んでいた。

"バクが迷子になればミアが見つける"
そんな暗黙のルールのようなものが周りには出来ていて、俺が迷子になっても不思議と心配はしなかったと父様は後になって笑って話してくれた。

…ただ過去に一度だけ、酷い迷い方をしたことがある。

あれは母方であるチャン家の魔術の訓練が始まったばかりの頃で、幼い自分にはきつくて辛くて痛みも伴う訓練は、大嫌いなものだった。
周りの期待や使命の重圧にも押し潰されそうで、誰の目にも止まらない場所へ逃げ込みたかった。
そうして駆け込んだ通路の奥で道を踏み外し水路に落ちてしまい、遠くまで流されてしまったんだ。

アジア支部は元々地下の洞窟を先住人が掘り進めて造り上げた、隠れ聖堂。
故に奥深くは未だ未開拓で、張り巡らされた洞窟は迷い込めば死にも繋がる。
そこまで奥深く迷うことは滅多にないが、土地勘のない子供であり流された身でもあったから、迷い込んでしまったんだろう。

結果的に二週間、彷徨った。

持っていた僅かな食糧もすぐに尽きて、どうにか水路の水だけで胃袋を満たす日々。
始終暗い洞窟の中では一日の感覚もわからない。
奇跡的に生き永らえたのは、子供故に体力がなく余り動けなかった結果だと思う。
それでも最後には一歩も動けず、暗い地下で倒れたまま死を覚悟した。

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