第17章 初恋がロリコン男である件について【バク】
「何故君が此処に…」
ジジ達のように、頻繁に俺の所に顔を出すような男ではなかったはずだが。
「ミアさんに頼まれまして。色々と見舞い品もお持ちしましたよ」
ミアに?
そう言ってハオが持っていた紙袋から、見舞い品とやらを取り出す。
当たり障りのない飲料水や甘味類の中に、見知った水筒を見つけた。
あれは…
「この水筒を返してほしいとも言われました。ちなみに中身はズゥ老師の漢方薬です」
「…自分で返しに来ればいいだろうに…あいつは」
貸した水筒を返すくらい、仕事の同僚でも普通にするだろう。
そんなに俺と顔を合わせるのが嫌なのか?
見舞い品を貰ったというのに、なんだか気分が良くない。
ベッドから身を起こして、受け取った水筒を恨めしく見下ろした。
「失礼ながら…支部長。それは無理難題を言うものです」
「? 何故だ」
ハオと深い付き合いはしていないが、ミアを通じてその人間性は知っている。
上司の言うことに反論などしない男だと思っていたが。
「今のミアさんは、仕事で手が離せない状況なんです。…寝込んでいる支部長の仕事を一手に受けおっているんですから」
「僕の仕事を、か?」
「はい」
確かに俺が席を外した場合は、ウォンかミアが適任となるが…そう言えばウォンは、つきっきりで看病をしてくれていたな…。
…となると…普段の仕事は、全てミアに回っているのか?
「何故ミアだけに任せているんだ…ッゲホ!」
自分の仕事だけでも多忙な身だというのに、俺の仕事にまで手を回せば体が幾つあっても足りんではないか。
つい声を荒げれば、枯れた喉が悲鳴を上げた。
「ミアさんが誰より支部長の仕事に理解がありますから」
「だからと言って、極端な配置は止めろ。次はあいつが倒れるぞッ病み上がりだというのに…!」
「病み上がり?」
「っ…なんでもない」
そうだ。
ミアのことだから、体調が悪化しなければ風邪のことも無闇に周りに吐露はしてはいないはず。
滑らせた口を慌てて噤むも、既にハオの表情は訝しげに変わっていた。
まずいぞ。
無闇にバレたら、俺がミアに怒られる。