第17章 初恋がロリコン男である件について【バク】
「……貴方には、弱みを見せているんですね…」
「な、なんだ?」
ぼそりと溢したハオの声は、小さ過ぎて聴き取れなかった。
問えば、キッと険しい顔が向く。
「お言葉ですが、支部長。貴方はミアさんの仕事を指図できないと思いますが」
それと同じに向けられた言葉は、厳しいものだった。
思わず耳を疑う。
「普段から、本来のミアさんの仕事に上乗せされている仕事は、ほとんど支部長のものです。貴方がしっかり仕事をこなさないから、いつもミアさんは疲労しているんですよ」
はっきりと突き付けられたハオからの指摘に、まるで殴られたような衝撃だった。
普段そんなことを言わない者から焚き付けられると、身に滲みるというか耳が痛いというか。
しかし今回はそれだけではなかった。
「こんな時にだけ良い顔をしないで下さい。あの方を労る気があるなら、普段から迷惑を掛けないように務めるのが支部長の役目じゃないんですか?」
「………」
「どんなに仕事が嵩張っても、ミアさんは根を上げたりしないんです。だからと言って部下に無責任に押し付けることもしない。それをこなせる人だから尊敬していますが、だからと言ってなんでも任せていい訳じゃない。周りはあの方に甘え過ぎなんです」
ミアのことを言われると、上手く返せる言葉が見つからない。
確かに甘えている部分はあった。
ミアに任せていればどうにかなると、不思議と安心できていたからだ。
ただ強く主張するハオの姿も初めて見たものだから、反応ができずにいた。
「ヒュウ!言うねぇ♪」
ケラケラとその場の空気に似合わないフォーの笑い声が響いて、ようやくハオも熱くなっていた頭が冷めたらしい。
はっとして表情を青褪めると、慌てて頭を下げにきた。
「す、すみません!偉そうに色々と…ッ今のは忘れて下さい!」
「いいじゃねぇか、ハオ。お前の主張は当たってるだろ?」
「黙れフォー」
尚もからかうフォーを睨んで制す。
それから枯れた喉が咳き込まないように、慎重に言葉を吐き出した。