第17章 初恋がロリコン男である件について【バク】
それでも、今もミアは俺の大事な家族であることには変わりない。
この手で守りたい、かけがえのないもののひとつだ。
「大事なものくらい…わかっているさ」
母様に反対された俺とは違い、第二使徒を使った人造使徒計画にも関わっていたミアは、9年前のアルマの大虐殺から辛うじて逃れられた存在だ。
その姿を発見した時は、アジア第六研究所の夥しい血の海の中で事切れた両親の亡骸を抱いていた。
声にならない声を詰まらせ、血に染まる涙を流し嗚咽していた。
後にも先にも、あんなに狼狽するミアを見たのはあの時きりだ。
…あの時から、ぼんやりと目指していただけの未来を、強く求めるようになった。
両親を失くしたことも大きかったかもしれない。
だけどもう、あんなミアの姿を見たくないと思ったんだ。
だからこのアジア支部支部長の座を目指した。
コムイへの競争心もあったが、それだけではここまで辿り着けなかった。
同じくアルマの惨劇から逃れたレニーは北米支部へと移ったが、ミアは変わらずこの場で働くことを望んだんだ。
だからこそ支部長になって最初に俺が実行したのは、ミアの配属地の決定。
なるべく危険の少ない役職に就けるようにと、裏で手を回した。
大事だと思っている。
守りたいと思っている。
なのに何故ミアは、俺の下から離れようとするんだ。
「っくしゅ!」
机に項垂れていれば、堪らずクシャミが出た。
悪寒の走る体に、ずびりと鳴る鼻。
…嫌な予感がする。
「…まさかな」