第17章 初恋がロリコン男である件について【バク】
"バクちゃん、あのね"
"バクちゃんじゃないよ。バク・チャンだって"
"バクちゃん"
"ちがう。バク・チャン"
"バクちゃん?"
"だから、そうじゃなくて…っ"
"…バクちゃん、おこった?"
"…べつに、これくらいでおこったりしないよ"
"…よかったぁ…バクちゃんはほんとうにてんしさまみたいだね"
"それもうれしくない…"
"なんで?てんしさま、きれいなのに"
"ぼくはキレイよりカッコイイがいい"
"そうなの?"
"おとこはそうだよ。それにキレイなら、ミアのほうだよ。おんなのこなんだから"
"そう、かな…でもミア、バクちゃんみたいなきれいなかみのいろ、してないし…"
"ぼくはキレイだとおもう"
"ほんと…?"
"うそはつかないぞ"
"っ…あのね、ミアもね、バクちゃんのことかっこいいっておもってるよっ"
"ほんとうに?"
"うん!…だからね…あの、ね…バクちゃん"
"なに?"
"ミアね、バクちゃんのおよめさんに──────…"
「…思い出した…」
言葉も思考も拙い、幼い頃の記憶。
両親共に多忙だった為に、その寂しさを埋めるように同じ年頃のミアとよく過ごしていた。
あの頃はまだ俺にもミアにも"家族"がいて、"幸せ"があった。
教団の根を腐らせた思考を知ることもなく、天使だなんて無垢な思想をミアも持っていた程だ。
すっかり家族と認識していたから、兄妹で結婚はできないと断ったんだったな…そういえば。
「………」
…断った時、ミアはどんな反応をしていただろうか。
そこだけが思い出せない。