第17章 初恋がロリコン男である件について【バク】
「いいか。バクのリナリー愛と、ミアの想いは違う。そこんとこしっかり自覚しておけよ」
「な、なんだ急に…」
「盲愛と情愛くらいに違うな」
机の上で仁王立ちするフォーに見下されて、思わず怯みはしたが納得がいかなかった。
俺のリナリーさんに対する愛の大きさが、お前にわかるのか。
「俺はリナリーさんを心の底から愛していブッ!」
「言葉に重みがねぇ!」
「〜っ…そ、れは貴様の勝手な判断だろうッ」
フォーの頭に蹴落とされた顔が再び机と衝突する。
貴様、これ以上暴力を振るうようなら部屋から追い出すぞ…ッ
「じゃあお前はリナリーの為を思って行動してるのかよ」
「は…?」
「やれ風邪だと聞けば教団に乗り込んで、リナリーの事情も聞かずに押し入ってんだろ。それのどこが愛情だってんだ」
「っそ、それは…」
「その度に心を殺してミアがお前の手助けをしてたのはなんでだ」
「それ…は…」
…確かに、そうだ。
ミアが俺に好意を持っているなら、何故リナリーさんへのフォローを毎回していたのか。
呆れた顔で罵倒もされたが、リナリーさんへの想いを否定されたことはない。
最後にはいつも手を貸してくれていた。
「わかんねぇか」
「………」
「だからいつまで経ってもバカバクなんだよ」
「っさっきから馬鹿馬鹿言い過ぎだぞ」
「嫌ならその無駄に知識を詰め込んだ頭回して考えろ。じゃねぇと本当に大事なもんを失くすからな」
「あ、オイ…!」
言いたいだけ言って、残像も残さず目の前からフォーの体が消える。
あいつ、言いたいだけ言って去りおって…!
「…大事なものだと…」
それくらいわかっている。
両親や沢山の仲間をアルマの惨劇で失ったからこそ、もう二度と失わないようにとここまで来たのだ。
チャン家の継承と、アジア支部長の座と。
死に物狂いで手に入れた地位は、この手で守りたいものを守りきれるようにする為だ。