第17章 初恋がロリコン男である件について【バク】
「もしあのことを他人にバラしたりなんかしたら…!」
「しねーよ」
「…は?」
「だから、しねーつってんだろ。バクはどうでもいいけどよ。ミアに迷惑が掛かるだろーが」
「僕はどうでもいいとは、どういうことだ…」
「そのまんまの意味だ。どーせバクのことだから、ミアの気持ちを初めて知ったって驚いてるんだろ?違うからな」
「??」
意味がわからず目で問えば、フォーは小柄な体を机の上にひょいと乗せて…オイだからこれは支部長机だぞ。
仮にも此処の最高責任者の机だぞ。
椅子のように扱うな。
「ミアが長年溜め込んでた想いだ。決死の思いで実行したことを、馬鹿になんかするかよ」
「長…年?」
「ほらやっぱ憶えてねぇ」
「な、なんのことだ」
この際、机を椅子代わりにするのは許可してやる。
だから勿体振らずに教えろ。
「ガキの頃、ミアに求婚されただろ。バクのお嫁さんになりたいって」
「………は?」
そんなことあったか?
フォーの言葉に実感が湧かず、腕組みをして必死に記憶を辿る。
ミアとは長年共に過ごしてきたから、その分記憶量も多い。
それでも求婚なんてされれば忘れるはずないんだが───…
「あ。」
「思い出したか?」
「…それはもしや…5歳にも満たない、子供の頃のことか?」
「あー、そうだったな。確か」
「そっ…」
そんな昔のこと、逐一憶えている訳ないだろう…!
「子供の頃の話だぞ…!一体何年前だと思ってるんだッ」
思わず脱力する。
そんな昔のこと、ミアも忘れてるはずだ。
第一、その間にあいつは何度も恋人を作ってきたぞ。
俺に紹介してきたことだってある。
だったらあれはなんだったんだ、好きでもないのにつき合ってたということか?
「だからお前はバカバクなんだよ。歳も年月も関係ねぇよ、女にとっての恋心は」
「何を知ったような口を…そもそもお前は女じゃな」
「フン!」
「あガッ!」
ガツン!と二度目の衝撃で机が真上にバウンドして、顎を強打した。
おま…っこれは仮にも伝統ある彫師に頼んで作らせた机であってだな…!