第17章 初恋がロリコン男である件について【バク】
「明日からは支部長と指揮官。それでお願いね」
一日あれば、私も切り替えられる。
それができない程、未熟な大人じゃない。
バクはその性格からして、すぐには切り替えられなさそうだけど。
その時は私から距離を取ればいいだけ。
「ま…待てっ勝手に決めるな…!」
「何言ってるの。最初から何も変わってないわよ」
決めるも何も、変更事なんて何もない。
最初からバクと私の関係は、支部長と指揮官だ。
部屋のドアを閉じようとすれば、慌てて手を伸ばすバクが見えた。
一瞬名残惜しさを感じたけれど、ここで踏み止まったら元の木阿弥。
「バクの優しさは、私には痛いだけなの。そんなもの欲しくない。バクも大人ならわかるでしょ」
感情に左右される思春期なんてとっくに過ぎ去ったし、それで誰にどう迷惑が掛かるか見えない程の立場でもない。
お互いに歳を重ねて、それだけ立ち位置も経験値も上がった。
それだけ、起こす行動にも責任が伴うようになった。
私も私の行動に責任を持つ。
これでバクへの想いは捨てるから。
「さよなら」
ぱたりと呆気なく閉じるドア。
最後に告げた言葉に、垣間見えたバクの顔はショックを受けていたように思えた。
…そんな顔しないでよ。
「別に人生の別れじゃないんだから…」
エドガーさんやトゥイさんや、私の両親とは違う。
この世から消えた訳じゃない。
だから、そんな顔をしないでよ。
締め切ったドアの前で項垂れる。
微かな煙草の残り香が、なんだか胸を切なくさせた。
私の方が苦しいはずなのに。
なんであんたの方が、そんな顔をするのよ。
「…バカバク」