第17章 初恋がロリコン男である件について【バク】
「お見舞いって何。リナリーが怪我でもしたの?」
「風邪だとよ」
「コムイ室長が仰るには、数日前の出来事だとか…」
バクに問えば、代わりにフォーとウォンが説明してくれた。
ならもう落ち着いているでしょ。
任務先で大怪我負った訳でもないのに、この慌てよう。
バクのリナリー好きはもう一種の病気だと思う。
「数日前でも風邪は風邪だ!僕はリナリーさんの元気な姿を見るまで退かんぞ!放せフォー!!」
「だぁから!コムイがもう治ったっつってただろ!今から教団に行ったって呆れられるだけだろーが!!」
「バク様、近々教団本部での合同会議があります故、その際にでも…!」
「嫌だ!今行く!!リナリーさぁあんん!!!」
「……朝っぱらから頭痛い」
ああもう、煩いな…。
騒音に耳を塞ぎたくなるけど、どうすれば沈静化するかは生憎わかってる。
腰を落として騒音の根源である、バクの顎を掴んだ。
「ぅぐっ?な、何を…」
「うるっさいわね。いい歳した大人が駄々捏ねて部下に迷惑かけるんじゃないわよ」
ウォンは支部長補佐なんて肩書きを持っているけれど、あれは単なるお目付け役だ。
他の部下がバクに振り回されないように、ウォンが付きっきりで彼の世話をしてる。
だから私が他班を纏める役なんてしなきゃならないんだけど。
ウォンは幼少期からバクの面倒を見てるから、多少甘いところもある。
だからその分、私が厳しくなった。
というか手厳しくしないと、この男は目を醒まさないでしょ。
「リナリーの処へは私の方から見舞いの品と手紙を送っておくから。大人しく返事でも待ってなさい」
「そんなことより直接…っ」
「その時間で一体幾つ仕事を片付けられると思ってるのよ」
前回のアレン・ウォーカーとAKUMAの戦闘騒動で、アジア支部のフォーの要塞は半壊してしまった。
二次被害を防ぐ為にも、急いで立て直さないと。
仕事は溜まりに溜まってる。
だからあんたの甘酸っぱい恋心につき合ってる暇はないの。