第17章 初恋がロリコン男である件について【バク】
仕事をしない、と言うと少し語弊がある。
バクはその若さで支部長まで昇り詰めただけの知識と実力と人徳は、きちんと持ち合わせている。
ただ一つ、面倒な問題を抱えているだけで。
『ったく!またかよ…!』
『バク様!落ち着いて下さいませ!』
『放せフォー!!』
慌ただしい叫び声と、どたんばたんと格闘しているような物音。
支部長室の扉を前に、開ける前からわかりきった光景を思い浮かべて溜息をついた。
「…失礼します」
一応と最低限の言葉はかけて、扉を開ける。
「おお、ミア殿!」
「来たかミア…!」
「ミアっ!?」
三人三様。
支部長補佐のウォンはあれは挨拶ね、おはよう。
アジア支部の守り神であるフォーは、歓喜の声。
そしてこの部屋の主であるバクは、驚愕の声。
部屋の中央でうつ伏せに倒れている、明るい金髪に切れ目の男が一人。
その背に跨って、小さな体で悠々と押さえ込んでいる桃色髪の幾何学模様を纏った少女が一人。
傍で花瓶や書類が倒れないよう支えながら、見守っている老人が一人。
やっぱり想像通りの光景が広がっていた。
「あ、ミアさん!」
「出たー!最後の砦!」
「ミアさんが来たなら安心ねっ」
ついでに科学班見習いトリオもいたらしい。
部屋の隅で声援を送ってくれるシィフ、李佳、蝋花達に笑顔を返して、早速と倒れているバクの目の前にヒールをカツリと落とす。
「な、何故お前が此処に…」
「呼ばれたからよ。何処ぞの支部長がまた仕事を放棄してるって」
「っ放棄などしてない!僕はただリナリーさんのお見舞いに…!」
出た。
先に言った通り、バクは仕事にルーズな人間じゃない。
それなりに責務を全うしようとする姿勢はある。
ただそれを済し崩しにさせてしまう人物が、黒の教団総本部にいるだけで。
リナリー・リー。
コムイ君の妹で、エクソシストでもある10代の少女。
あんた幾つよ、もう30でしょ。
いつまで17歳の女の子のお尻追っかけてるわけ。