第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)
「雪先輩、この間の地図のことなんですが…」
「うん?これ?どうし───わふっ」
「なんだ、地図って」
「重…次行くファインダーの調査任務の地図だよ。というか重いんだって」
「こっちの方が見易い」
「ユウは関係ないでしょっ?」
「意見はあって困るもんじゃねぇだろ」
「それはそうだけど…っ」
「あ。神田、またアレやってる」
「アレですか?」
「ああ、アレさね」
とある日の、黒の教団の廊下の一角。
雪と神田とファインダーのキエ。
三人の姿を遠目に見つけたリナリーが、司令室に持っていく書類の束を両手に足を止めた。
同じく書類を運ぶ手伝いをしていたアレンとラビもまた、目を止める。
地図を広げたキエの前で覗き込む雪の頭に、のしりと顎を乗せて同じく地図を覗く神田の姿。
高身長な神田の為簡単に出来てしまう行為だが、雪は余り良い顔をしていない。
「あれ、神田の枕代わりになってるんだって。雪が前に言ってたの。身長縮みそうだから止めて欲しいって」
「また雪さんに変なことを…」
「いやぁ、アレは枕じゃねぇだろ」
「そうなんですか?」
「でも雪はそう言ってたわよ?」
「雪はそうでも、ユウは違うって。あの顔見てみ」
ほれ、と顎で促すラビに、アレン達もまた視線を向ける。
我が者顔で雪の頭に顎を預けたまま、それ以上口煩く言うこともなく神田の目は地図へと落ちて───はおらず。
無言でじっと見ているのは、何故かファインダーのキエ。