第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)
「それで、この市街地の聞き取り調査なんですが…」
「………」
「雪先輩にはマオサと組んで貰って…」
「………」
「それで…あの…」
「………」
「ぁ…あの…」
強い威圧は感じないが、地味に冷たい神田の視線を受け続ければ、並のファインダーなら尻込みもする。
どんどん尻窄みになる声で、キエは上げられない視線を地図に落とし続けた。
「…雪先輩」
「ん?それで、何?」
「も、もう大丈夫です」
「え?でもまだ通路の数の確認が」
「いえ!もう充分です!後はマオサに連絡しておきますんで!」
「あ!キエさん!」
慌てて地図を畳み、逃げ出すようにその場を後にする。
キエの姿が去ったことを確認すると、神田はあっさりと雪から身を退いた。
「急ぎじゃなかったのかな…?」
「大丈夫つってんなら別にいいだろ。要点は伝えて行ったんだ」
「そうだけど…」
「行くぞ。飯食うんだろ」
「あ、うん」
先を歩く神田に、疑問は残るものの雪も続く。
一連のやり取りを傍観していたラビは引き攣った笑みを、アレンは呆れた顔を、リナリーは溜息を一つ。
「ありゃ自分のモンだってマーキングしてるだけさ」
「どんだけ独占欲あるのよ…」
「何かあったんじゃないですか?独占欲駆り立てられることとか」
「お。アレンにしては珍しくユウに配慮ある考えじゃね?」
興味深い目を向けるラビに、アレンはにっこりと綺麗な笑顔を浮かべて返した。
「だって理由も無しにあんなことしてたらムカつくんで。その時は一発殴っておきます」
「あ、そう…」
*さよならの前に〜後日談〜*
(駄目よアレン君。急に殴りに行ったりしたら)
(リナリー…でも、)
(その時は私も呼んで、加勢するから)
(えっ…喜んで!)
(うおーいユウー命狙われてんぞー)