第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)
「女の子のピンチに助けに来るのは、ヒーローの鉄則ってもんよ」
「ヒーローじゃなくて泥棒だけどね」
「雪、今それ言ったら雰囲気台無し」
「雪!ルパン…!」
変わらないやり取りを見せるルパンと雪に、カーラの顔に笑顔が戻る。
少女の無事にほっと頬を緩ませた雪は、もぞりと足元で動く気配を感じ取った。
「ぐっこのォ…!」
憤慨した様子で体を跳ね起こすブッチを、ひらりと躱して距離を取る。
「あったまキタぜ!蜂の巣にしてやる!!」
「それならこの銃の方が適任さね。あたしに任せな」
じゃこん、とマーマが構えた巨大なガトリングガンの複数の銃口が雪達へと向く。
「助けに来たからなんだい?状況は何一つ変わっちゃいないよ、寧ろ好都合だ。さぁ、小娘!この二人を穴だらけにされたくなけりゃ塔への行き方を吐くんだよ!」
「…っ」
「言わなくていいよ、カーラちゃん」
「そうだぜカーラ。お宝を守ってるんだろ?」
「でも…」
「ほざくんじゃないよ!三対ニでどうやって勝とうってんだい!?」
「デール!早く銃を拾え!」
「う、うんッ!」
ガチャリと向けられる三つの銃。
対するこちらの飛び道具は、ルパンの持つワルサーP38のみ。
誰が見てもどちらが不利かは明白だった。
「どうせなら銃を撃ち抜いて使えなくすればいいのに…」
「下手な所に当てて暴発したら堪んないでしょ。オレ様考えて撃ってんのよ?」
ジト目を向ける雪に、心外だとばかりにルパンは肩を竦める。
パタ…
二人の視界の間に黒いシルエットが舞い込んだのは、その時だった。
丸いボディに蝙蝠型の羽。
(あれは…)
見覚えのある姿に雪の目が瞬く。
ガァン!ガァン!ガァン!
瞼が下りて再び上がる、瞬きの一瞬。
その1秒にも満たない時間の間で、響き渡る銃声が三つ。
それは全て的確にマーマ一家の手元を狙い、三人の銃を弾き落とした。
「三対ニじゃねぇぜ」
はっとしたマーマと雪の視線が上がる。
声は、雪が飛び降りた階段の上から。
「お前達があまりにドタバタ煩ェもんで、来てやったよ」
マグナムを構えた次元が其処にいた。