第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)
「こりゃマジでシャレにならねぇな…!」
「それ最初から言ってるでしょ!?何処かに出口は…!」
みるみる内に迫り落ちてくる天井に、ルパンが咄嗟に天井へと両手を付いて押し上げる。
そんなこと何も意味を成さないことは、二人共わかり切っていた。
「こういう手のトラップには、大抵身内の為の緊急停止スイッチがあるはずなんだが…!」
「見当たらないよ!?」
ルパンの言葉に、必死で辺りを汲まなく調べる雪だが、それらしいスイッチは見当たらない。
そもそもわかり易く作られていては、部外者が罠に掛かった時に易々と脱出されてしまうだろう。
『紋章よ!紋章を探して!』
『お黙り!!』
「「!」」
分厚い石の壁の向こうから、微かに届いたカーラの叫び。
ルパンと雪は顔を見合わせると、すかさず言われたまま紋章を探した。
「! あった!紋章!ルパンこれ!」
先に声を上げたのは雪だった。
地面に這いつくばるようにして壁に飛び付く。
「くぐ…ッオレは天井を押さえるので手一杯だ!雪、頼む!!」
「うん!って言ってもこれ、二つあるんだけど…!?」
雪が見つけた紋章は、床擦れ擦れの壁に掘られた丸い紋章だった。
ガウティーリ家の紋章なのか、城のような形と獅子のような形が掘られた箇所に、それぞれ穴が一つずつ。
人の手がやっと一つ入りそうな程、小さな穴だ。
「こ、これ、中に手を突っ込む感じ?」
「恐らく片方がトラップだ!間違えると二人仲良くお陀仏だぞ!」
「ええ!?でも二つに違いなんてないよ!?片方がお城の紋章で、片方がライオンの紋章だけど…どっち!?」
「ありゃ…オレもそこまでは…」
「えぇええ…!」
あたふたと二つの穴を見比べる雪に、ルパンもお手上げの万歳状態。
否、その万歳姿勢も徐々に天井の石壁に押されて縮まっていく。
二人の命は数分と保たない状況だった。