第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)
「入りな!」
「うわっ!」
「った…!」
「ルパン!雪っ!」
荒々しくマーマに蹴落とされたルパンと雪の体が、細長い小さな穴から落下する。
悲鳴を上げるカーラの目の前で、二人が落とされたのは窓のない正方形の壁の箱の中だった。
カーラを人質に取られ手の出せない状態の二人をマーマが連れて来たのは、通路内のとある部屋。
唯一の出入口は、マーマが仁王立ちしている、高い位置に作られた長方形の小さな穴だけだ。
「いちち…オレとデートするんじゃなかったのか?」
「あたしよりその女が好みなんだろ?」
「まぁね」
「他の女に目移りするような男は要らないよ。それに来る途中に面白い仕掛けを見つけたもんでねえ」
「目移りも何も、オレは最初から雪しか見てねぇからな」
「っ!お黙り!」
「言ってる場合じゃないからルパンッそれよりカーラちゃんに酷いことしたら許さないから…!」
「ハン!小娘は自分の心配でもしてな!デール!」
「はいっ!」
飄々と笑うルパンに憤慨したマーマが、怒りをぶつけるようにデールに指示を出す。
何やら謎のコテのような仕掛けに飛び付くデールに、ガコンとスイッチが切り替わるかのように重い音が響いた。
それと同時に、鉄の箱の部屋に違和感が生まれる。
「なんだぁ?」
「天井が…!」
頭上からパラパラと落ちてくる土埃。
見上げたルパンと雪の目に、とんでもない光景が飛び込んできた。
ゆっくりとだが、石造りの天井が下がってきているのだ。
どうやらこの隔離された部屋は、中の人間をミンチへと潰してしまう恐るべき仕掛けだったようだ。
「そんな…っ二人とも!」
「おっと!ちゃんと捕まえてなブッチ!娘に死んでもらっちゃ困るからねえ!」
「はいマーマ!」
駆け出そうとしたカーラをブッチが押さえ付ける。
その少女の目の前で、ルパンと雪の姿は迫り落ちる天井で見えなくなった。
「そこで仲良くデートでもしてな。永遠にね」
「雪!ルパーンッ!!」