第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)
(元々、問題なんてない仲みたいだしな)
神田と雪は、ルパンと不二子とは違う。
それくらいなら見ていればわかる。
「雪がなんだよ。言い掛けたなら最後まで言え」
「俺ァ野暮なことはしないタチなんでね」
「野暮かどうかは俺が決める」
「決めるも何も、雪相手だと目が離せないんだろ?」
「っ」
「はっはっ、図星か」
言葉に詰まる神田の姿は、今まで次元が見た中で一番年相応な姿に見えた。
ルパンや次元より年下であろう神田も雪も、生きている世界が戦場だからか幼さは余り感じさせない。
だからこそ貴重なその姿に、笑い声も大きくなる。
「色恋にゃ興味ねぇが、あんたには必要なもんらしいな。大事にしろよ」
「…そのにやけ顔止めろ腹立つ」
「いやぁ、ついな。はっはっはっ」
「笑うな!」
暗い通路には凡そ似つかわない、明るい笑いと派手な罵声が響く。
頭上で羽ばたく通信ゴーレムだけが、そんな二人の様子を興味深そうに観察していた。