第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)
明らかに壁の向こうで何かが起きている。
黒光りする六幻の刃に神田が人差し指と中指を添えると、忽ちに白い刃へと変わる。
「お、おいまさか…」
「下がってろ」
ものの数秒の出来事だった。
常人の目では終えない速さで神田の振るった刃が、目の前の壁に幾つもの亀裂を生む。
一瞬の静寂を保って、ガラガラと崩れ去るコンクリート。
ぽっかりと壁に開いた巨大な穴。
恐る恐る次元が覗き込んだ先には、確かな空洞が続いていた。
「まさかこれがルパンの言ってた隠し通路ってやつか?」
「行くぞ」
「あ、おいだから待てって!…ったく」
迷い無く踏み込む神田の背中に溜息を吐き出して、次元もまた穴の中へと踏み入った。
「好戦的な五ヱ門みたいだな、お前さんはよ…」
「ケホ…なんだ?この土煙は…」
「此処で何かあったらしいな…AKUMAでも出たか」
「おいおいマジか?俺ァごめんだぜ、そんな妙なもんと戦争なんてよ」
「安心しろ、そいつらは一匹残らず俺の獲物だ」
「へえ…そうかい」
踏み入った先では、雪崩のように総崩れした瓦礫の山が立ち塞いでいた。
先へはどうにも進めなさそうだが、反対の道へは進めそうだ。
得物片手に先へと進む神田の姿をやれやれと見つつ、続く次元の両手はポケットに収まったまま。
「そりゃあ頼もしいことで」
五ヱ門程の刀の使い手が暴れ回れば、敵無しとなる。
その実力を知っていたからこそ、次元は改めて再確認した。
彼は義理を重んじる殺生を好まない性格だから、良かったのだと。