第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)
「ひゃわあ!?」
「ひぃ!?」
「なんだ?地震かっ?」
「…違う」
地響きは決して大きなものではないが、目の前の机のコップや皿がカタカタと揺れる程には確かなものだった。
互いに抱き合い悲鳴を上げる少女とアルドルフォに、次元と神田も辺りを警戒する。
そして人一倍気配に過敏な神田が、いち早くそれに勘付いた。
地震とは異なる地響き。
何処か遠くで鳴っているようにも聞こえるが、音源は確かにホテル内にある。
「起きろ」
神田の声に反応を示したのは、懐に潜り込んでいた通信ゴーレムだった。
ピピ!と目覚めの声を上げながら、神田の頭上を旋回する。
「あの音の出処を探せ」
『ピュイ!』
「追うぞ」
「は?お、待てよ…!」
素早く廊下へ飛び出していくゴーレムを神田が追う。
更にその後を、慌てた様子で次元が続いた。
「あいつらはいいのか!?」
「これ以上確かな情報は得られねぇだろ。あいつらは宝のことなんて知らない」
「そうかもしんねぇけどよ…っ大体この地震はなんだ!?」
「地震じゃない。誰かが作り出したもんだ」
「作り出したもんって…」
「その近くに雪達もいる可能性が高い」
消えた雪とルパンのことも、当然のようにアルドルフォ達は知らなかった。
謎の霧も憶えがないと言う。
となればそれとは別の何かが、働いていることとなる。
それが何かはわからないが、雪達が消えた謎と関わりあることは高いだろう。
やがてゴーレムが動きを止めたのは、なんの変哲もない廊下の一角だった。
動きを止めるのではなく、壁へと体を頻りに擦り付けている。
「この先か」
「つっても、行き止まりだぞ?」
「音は壁の向こう側からする」
地響きは先程より大きくなっていた。
肌に直接地響きを感じながら、すらりと六幻を鞘から抜く。
ドゴォン!!!!
「「!?」」
同時に巨大な何かが衝突するような、重い轟音が響いた。