第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)
「…経営難?」
「こんな町里離れた場所じゃあな…」
ホテルのプライベートルーム。
そこで椅子に座り頭を項垂れる老人と少女を前に、神田と次元は尋問を行っていた。
否、気付けばいつの間にやらホテルの苦しい状況をアルドルフォから伝えられ、愚痴を聞かされる役目となっていた。
「ええ。それで幽霊の噂がもっと広がれば、少しでもお客様にお越し頂けるかと…」
「フン。本当にそれだけか?」
「は?…と申しますと?」
「えー、ああ、いやぁ…」
疑いに掛かるも、逆に問い返され面食らう。
そんな次元に溜息をつくと、神田が一歩前へと踏み出た。
「他に隠してることはねぇのかよ。こいつが花嫁の幽霊役をやって、お前が甲冑の人形に化けてた以外に」
「隠していること、ですか?」
「な、なんのこと…?」
「………」
更に問い返される。
神田の威圧を感じてか、怯えながらも首を傾げる二人は嘘を付いているようには見えない。
「…しらばっくれてんなら沈めるぞ」
「っ!う、嘘など申しておりません!!」
「そうよ!パパはちゃんと全部話したんだから!」
ボキリと拳を握る神田に、忽ち二人の顔が真っ青に青褪める。
それでも尚首を横に振る様に、次元もまた首を傾げた。
「こいつら、お宝のことは知らねぇのか…?」
主に神田の脅しにより、アルドルフォから得た情報。
それは経営難のホテルを継続させる為に、自ら心霊現象を演じて作り上げていたという話だった。
悲劇の花嫁アデーラは、アルドルフォの娘が演じていたもの。
雪と次元が見たクローゼットの幽霊は、この少女だったという。
しかしそれ以上に他の情報は二人からは出てこない。
それとなく問い質しても、ミケランジェロの絵画の情報はさっぱりだった。
ぼそりと呟いた次元の声は、アルドルフォ達には聞こえていない。
ゴゴゴゴ…
代わりに聞こえてきたのは、謎の地響き。