第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)
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「これでよし、と」
パンパンと手を叩いて、付いた土屑を落とす。
腰を上げる雪が退いた後には、しっかりと体を縄で縛られタオルで猿轡をされたブッチとデールが出来上がっていた。
雪の手によって伸されたブッチの顎とデールの額には、くっきりと痣が浮かんでいる。
「さっすが雪ちゃん格好良いっ」
「性差別なんてするからだよ」
ひゅうっと口笛を吹くルパンに、ふんとブッチ達を一蹴した雪は素っ気ない。
しかし縮まっているカーラの下へと向かうと、男達を伸した手は優しくその頭を撫でた。
「もう大丈夫だよ、カーラちゃん」
「…雪って、強いんだね。ルパンも」
「まぁ、仕事柄ね。あれくらいなら任せて」
えへんと笑って力こぶを片手で叩く雪に、ほっとカーラも笑顔を見せた。
「女は怒らせたら怖いってこと、これで学んだな」
「ふグっふぐぐ…っ」
「ふも…」
「まぁ大人しく此処で待ってな」
タオルで言葉を奪われた二人ににひりと笑って、ルパンもまた腰を上げる。
「雪。ルパン。二人にお願いがあるの」
そこへ意を決したように、カーラが二人の手を取った。
「お願いって?」
「あたしと一緒に…宝物を守ってっ」
「え?」
「宝を?」
目を丸くする雪達に至極真面目な面持ちで頷くと、カーラは二人の手を強く引いた。
「こっち!二人ともついて来てっ」
小走りに駆け出すカーラに、仕方なくと雪とルパンも続く。
その場に残されたのは、くぐもった呻き声を上げるブッチとデールのみ。