第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)
「この通路に迷い込む時に見た霧は、僕達が作ったんだ!本物だと思ったでしょ?」
「へえ。ありゃマーマ一家の仕業だったのか」
「ドライアイスと水をね、まずは用意してね」
「…ドライアイスとな…」
「だから言っただろ?人工の霧だって」
ずばりルパンの読みは当たっていた。
思わず呟く雪に向ける彼の笑顔は眩しい。
「そこで二人が落ちていく様子を見て、僕達もここへ来たんだよ」
「へーえ。ブッチとデールにしちゃ中々やるじゃねぇか」
「それならユウも見えてたんじゃないのかな」
「フン。あの一緒にいた長髪の男は一番気配がやばかったからな。一番霧を焚いておいた。なんにも見えてねぇはずだぜ」
「気配がやばいて。流石チップとデール…動物の本能?」
「へへ、それ程でも…」
「だから褒められてねぇって言ってんだろ!照れるなデール!オレ達はあんなシマリスじゃねぇ!!」
すっかりルパンと雪のペースに乗せられている様に、苛々とブッチが握っていた銃口を振る。
「いいからそのガキをこっちへ渡せ!宝の在り処を知ってんだろ!?」
「…っ」
「大丈夫だよ、カーラちゃん。私達が守るから」
ブッチの剣幕に体を震わせるカーラに、そっと雪の手が触れる。
肩に置かれた手にグリーンの瞳を滲ませると、カーラはこくんと小さく頷いた。
「何してるんだ!早くガキを───」
「よぉ!マーマじゃねぇか!」
「「マーマ!?」」
二人の後方に突如手を振るルパンに、今度はブッチとデールが体を震わせた。
ぎょっと振り返る二人に、素早く懐のワルサーを抜き取る。
ガァン!ガァン!
放たれた二つの銃弾は、正確な狙いでブッチとデールの手を傷付けることなく拳銃を撃ち落とした。
「っ!」
「あ、あれ?」
ルパンの典型的な騙しに気付いた時には、遅かった。
振り返った二人のすぐ目の前に、腰を低く構え攻撃の範囲内に入った雪が映る。
「待っ───ぐガッ!?」
「兄ちゃぁん!?」
青褪め引き下がろうとするブッチの顎目掛けて、蹴り上げたブーツの裏が叩き付けられた。