第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)
「宝の在り処を教えてもらおうじゃねぇか」
一人は小太りな無精髭の男。
「そ、そうだっ在り処を吐けっ」
もう一人はひょろりと背の高い細身の男。
凹凸のある若い男達だが、彼らの手に握られた銃口はルパン達へと向いていた。
「あらら〜っイタリア一間抜けな強盗団、マーマ一家じゃねぇか!」
雪には面識のない男達だったが、ルパンは違ったようだ。
急に明るい声を出したかと思えば、砕けた笑顔で語りかける。
泥棒とあらば強盗団とも知り合いになるのだろうか、しかしその笑顔にはカーラへと向けたような優しさはない。
「へへ、兄ちゃん、イタリア一だって」
「バァカ!褒めてねぇよ!バカにされてるんだって気付けデール!」
「ひぇ…ごめんなさいっ」
デールと呼ばれたひょろ長の男は、どうやら少し頭が緩いところがあるらしい。
そして小太りの男は彼の兄のようだった。
「ルパンの知り合い?」
「まぁちっと、家業柄ね。マーマ一家ってのは家族で形成してる強盗団さ。筆頭は母親のマーマ。あの二人は息子のブッチとデール」
「…チップとデール?」
「雪ちゃん、そりゃ別の兄弟。夢の国の子リスちゃん達をあんな小汚い盗賊団と一緒にしちゃ可哀想だぜ」
「だァから!バカにすんなって言ってんだろ!?オレ達は泣く子も黙る盗賊団、マーマ一家だ!!」
「おーおー、威勢がいいねェ」
のんびりと拍子抜けるデールとは違い、ブッチは短気のようだ。
これではいつ発砲されるかもわからないと、雪は腰を屈めてカーラを完全に二人の視覚から隠した。
「オレ達はそのガキに用があるんだ、女は引っ込んでろ!」
「何その性差別。今時流行らないけど」
「フン!オレ達が仕掛けた罠に簡単に引っ掛かった癖に、よく言うぜ」
「罠?なんだぁそりゃ」
「お前もだルパン。二人仲良く騙されて、笑いもんだったぜッ」
「ねぇ兄ちゃん、兄ちゃん。僕言っていい?いい?」
「ああ」
そわそわと嬉しそうに問うデールは、まるで先程のカーラのようだ。
兄の了承を得た弟は、自慢ありげに胸を張って事の経緯を語った。