第5章 ◇8/10Birthday(ラビ)
"誕生日に一緒の時間を過ごしたい"
そう言われて嫌な気なんてしない。
寧ろ……うん。
「それくらいなら、私も時間空けて──」
「でも無理なんだよなー」
頷きかけた頭が止まる。
…はい?
「オレその日任務入ってるし。コムイの奴も容赦ねぇよな」
はぁ~っと深い溜息をついて肩を下げるラビ。
そう、なんだ。
「任務って…なんの任務?」
「イノセンス回収任務。中国だから、ついでにアジア支部への遣いも頼まれてさ。ぜってー一日じゃ終わらねぇ気がする」
「……そっか」
AKUMA討伐じゃないなら、そこまで心配しなくてもいいかもしれないけど…。
でも…当日にお祝いしてあげるのは、難しそうだな…。
「じゃあ…帰ってきたら、お祝いしようね」
まぁ、仕方ないか。
黒の教団は行事なんて構ってられない、忙しい職場。
苦笑混じりに言えば、再びラビの目がこちらに向く。
「…ん、」
少しだけ下がる眉。
ヘラと笑う砕けた笑みはいつものものだけど、いつもより元気はない。
…あ。
その顔を見ると、なんだか少しだけ胸がツキンとした。