第5章 ◇8/10Birthday(ラビ)
「プレゼント、それがいいさ」
「……え」
…いや、ちょっと待って。
何その少女漫画とかでありそうな台詞。
(いやわかんないけど!)
私そういう甘酸っぱい世界にいる学生とかじゃないから。
日々カフェインの匂い浸み付けてる社会人だから。
胸きゅんとかしないから。
寧ろそれどういう意味って思うから。
私にリボン付けてはいどうぞって意味?
最早それR18指定になるから!
「ぶっふ!」
「な…ッ」
唐突なラビのプレゼント要求に返事できずにいると、そんな私を見て急に吹き出された。
まさか…っ
「からかったの…っ!?」
「南、百面相し過ぎさ…ッおもしれーっ」
「お、大人をからかうんじゃありません…!」
恥ずかしさで顔が熱くなる。
一瞬本気にしたのに。
「ははッ…はー…でも本音さ、からかってねぇって」
「はっ?」
笑い過ぎて涙の滲む目元を指で擦りながら、大きく息を吐き出す。
そうして続けるラビの言葉に思わず勢いが削がれた。
本音?って言った? 今。
「正しくは南との時間が欲しい、かな」
爆笑が落ち着いたのか、もう可笑しそうに笑ってはいなかったけど。
その顔は優しい笑みを浮かべていた。
「折角の誕生日なんだし、好きな人と一緒に過ごしたいだろ?」
「……」
"好きな人"とはっきり口にされると、いつも上手く言葉を返せなくなる。
改めて、ラビは私に友達や仲間以上の気持ちを抱いているんだと実感して。
照れ臭さと共に、むずむずとこそばゆくなるような感覚。
まだちゃんと答えを出せていないのに。
だけど…そんなラビに嫌な気は全くしない。
…そういえば、あのキスもそうだった。
泣き黒子のノアに無理矢理された時は、嫌悪感しかなかったのに……ラビに対しては、そういうものなかったな…。
それってやっぱり…ラビの想いを知る前から、私には大きな存在だったってことなんだろう。