第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)
「…ねえ」
「ん?」
「お?」
「二人はお姉ちゃんのこと、知ってるの?」
恐る恐る問い掛けてくるカーラの目に、再び不安な色が混じる。
姉と言うと、悲劇の花嫁アデーラに扮していた、もう一人の少女なのか。
目を合わせる雪とルパン。
「会ったことはねぇけどもな、よぉく知ってるよ」
先に動いたのはルパンだった。
カーラ自身が姉はアデーラだと言った。
ならばその話に乗ってあげるつもりなのだろう、目線を合わせるようにして屈み応えるルパンに、カーラの表情が明るいものへと変わる。
「あ、あたしっお姉ちゃんに迎えに来るまで宝物を見張ってなさいって言われてるのっ」
姉のことが好きなのだろう。
少し自慢げに嬉しそうに語る少女に、雪とルパンは再度目を合わせた。
「そっか、ちゃんと言いつけを守ってるのか」
「偉いね、カーラちゃんは」
共に笑顔を向ける二人に、カーラの目から恐怖心が消える。
根は感情に素直な表情豊かな子供なのかもしれない。
「二人もお姉ちゃんに言われてきたのっ?」
「ぉ、ああ…まぁ、そんなところだ。カーラ一人じゃ心配だからってな」
正確に言えばアデーラの言いつけで来た訳ではない。
カーラを騙すような返答に渋りはしたものの、素直な笑顔を見てしまっては簡単に首を横には振れない。
じっと見てくるルパンの語る目に、雪は諦めて肩を落とした。
「はぁ、そうだね…でも場所を聞くのを忘れてしまって、二人で探してるんだよ」
「ふふっそれじゃ見つかりっこないよ」
「え?」
雪にくすくすと可愛らしい笑い声を向けると、カーラは繋いでいない手を大きく広げた。
「だってここにはないもの」
「そうなの?」
「そいつはどういう意味だ?カーラ」
「そいつはオレ達も知りたいね」
ガチャリと安全装置を外す鉄の音。
突如暗闇の中から響いた第三者の声に、雪は咄嗟にカーラを背中へと隠した。
鋭いルパンの目が向いた先には、暗闇の中に立つ二つの人影があった。