第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)
「それじゃあ雪は、カーラと仲良く幽霊探しでもするか?」
「ぅ…それは…」
「ゆーれい…?」
丸いグリーンの瞳が雪を見上げる。
その幼気な瞳に、ぐっと雪は言葉を詰まらせた。
わざわざ心霊現象を幼い子供に体験させるなど、それこそ悪趣味だ。
「オレは一人で宝探しでもいいけどな」
ひらひらと片手を振って先を進むことを止めないルパンに、どうしようかと雪もまた一歩踏み出した。
「そっちに行っちゃだめ」
「え?」
く、と手を引かれる。
繋いだ雪の手を握りしめ止めたのは、カーラだった。
「駄目って、なんで───」
「うぉわあ!?」
ガコンと、聞いたことのある音が雪の耳に届く。
瞬間、先を歩いていたルパンの姿が忽然と消えた。
否、急に開いた足元の扉に、すっぽりと体が吸い込まれるように落下したのだ。
どしん!と落下したルパンの尻が硬い石床に衝突する。
「ぃ…ってぇ〜…!」
全身に鳥肌を立たせ、縮み上がるように悲鳴を上げる。
尻を押さえて仰け反ったルパンの目が、背後の天井を捉えた。
「…へ?」
ルパンの背後に聳え立っていたのは、坂を作るように設置された傾斜と巨大な円柱の石だった。
巨大な円柱には鋭い棘が幾つも装飾されており、毒々しい外観をしている。
ガコン…
「…お?」
その円柱を支えていた小さな突起が、ルパンの落下を合図に傾斜の床の中へと引っ込んだ。
支えを失ったものは重力に従うだけ。
嫌な予感に顔を青くするルパンの前で、ごろりと円柱が傾斜を転がり始める。
「ぉ、おいおいおいおい…!」
やがて速度は一気に増し、物凄い勢いでルパン目掛けて落下を始めた。
「ルパン!逃げて!」
「言われなくてもぉおお!」
まるで巨大な丸太を前にした小さな鼠のように、猛スピードで駆けるルパン。
天井の穴から事の有様を把握した雪は、咄嗟に辺りを見渡した。
「あの通路に出口は…!」
「出口はないよ。行き止まりなの」
「ええ!?」
「でも、別の天井の穴ならあっちにも…っ」
「何処!?」
「こっち!」
雪の剣幕に圧されたカーラが、急いで雪の手を引き走る。