第5章 ◇8/10Birthday(ラビ)
「あー…後はあれさ。オレ、夏生まれだし。それじゃね?」
むっとしてしまった私にフォローのつもりか、付け足すように言葉を並べる。
そんなラビの振ってきた話題の方に興味は湧いた。
夏生まれ?
…そういえば。
去年、夏に教団本部でラビのお祝いやったような…。
「そういえばそうだったね。何日生まれだったっけ」
「8月10日」
「ふーん…って今週じゃないのそれ」
去年は食堂でジェリーさんが作った特大ケーキを皆で食べて「おめでとう」って声をかけるくらいしかしなかったから。
日付までしっかり記憶にはなくて、だから驚いた。
一週間もないなんて。
すぐにプレゼント用意できるかな。
……。
…ってなんで当たり前に焦ってるんだろう、私。
去年はプレゼント用意なんてしてなくても、気にしなかったのに。
「……」
理由なんて考えるとすぐに見つかった。
去年と今年。
ラビと私の間にあったものは大きく変わったから。
ラビがその心に抱いていた想いを伝えてくれて…私も、受け止めたから。
(保留って形だけど)
今までと変わらず接しているけど。
こうして変わらず砕けた仲でいるけど。
内面は、変化がついたんだ。
そう悟ると、顔の熱が増したような気がした。
……暑さの所為にしておこう。
「何か欲しいものある?」
「へ?」
「誕生日。…去年は何もあげてないし」
言い訳のように理由を付け足す。
アレンの誕生日をお祝いした時は、こんな変にドギマギしなかったのにな…。
「…言ったらくれるんさ?」
「あんまり高価なものじゃないならね」
科学班の給料、そんなに良い訳じゃないから。
唯一見えている左目が珍しそうにぱちりと瞬く。
そして考える素振りも見せずに一呼吸置くと、すんなりと口を開けた。
「じゃあ、南」
……はい?