第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)
「ドライアイスだな、こりゃあ」
「…あ?」
足元に落ちている小さな水滴と一欠片の白い氷。
触れれば熱さを感じる程のマイナス温度に、次元は屈んでいた腰を上げた。
「これで霧紛いのもんを発生させてたんだろ。心霊もイノセンスも関係ない、人の手で作られたもんだ」
「てことは…」
「幽霊がホテル側の人間が作り出した空想の代物だって説は、有力かもな」
次元と合流した後、再び雪とルパンが消えた廊下へと戻ってきた神田。
ルパンも予想していたその説に次元も乗るとあらば、可能性は非常に高くなる。
確かにイノセンスやAKUMAの気配は微塵も感じられなかった。
となれば、霧や幽霊は全て偽物だったのか。
「………」
無言を貫く神田の額に、ピキリと青筋が浮かんだ。
「あ、おい。何処行くんだよ?」
「ホテルの奴らを問い質す」
雪達が消えた原因も彼が知っている可能性が高い。
となれば地道に二人を捜すより、その知っている者を問い詰める方が手っ取り早い。
「行くぞ」
「お、おう…(尋問でもする気じゃねぇだろうな)」
先を進む神田から滲み出る威圧を感じながら、次元もまた続いた。
もしこれがホテル側の悪戯であったとしたら、確かに一言物申したくなる。
散々心の底から驚かされたからこそ、の心理だ。