第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)
「あららァ…雪も此処に落ちたんだな、こりゃあ」
ポリポリと頭を掻きながら、仕方ないとばかりに溜息をついて腰を上げる。
探していたものは、この隠し通路だ。
となれば後に退く選択はない。
「待ってな神田。雪を捜してくっからよ」
分厚い壁の向こう側にいる彼へと呼び掛ける。
返答は勿論、返ってなどこなかった。
「───とまぁ、そんな感じかな」
「じゃあユウはまだ私達を捜してるってこと?」
「だろうねぇ」
「やっぱりどうにか此処から出ないと…あ!さっきの落とし穴から外に出られる仕組みなんだよねっ?」
「ああ。オレなら遠慮するけどな」
一部始終、此処へ辿り着いた経緯を聞いた雪が慌てる中、ルパンは飄々と変わらない態度を貫いていた。
再び落とし穴の仕掛けスイッチを踏もうとする雪の足が、ぴたりと止まる。
「なんで?」
「予想通り、隠し通路はあったんだ。お宝も此処に眠ってる可能性は高い」
「そう、かもしれないけど…」
「雪の捜してる幽霊の足音だって聞いたんだろ?此処にはお互いの目的が隠されてると思うぜ」
宝と幽霊。
どうにもその二点は結び付いているらしい。
ルパンの意見に納得したのか、スイッチを踏もうとしていた足を雪は退いた。
「…わかった。ユウは一人でも大丈夫だし。私ももう少し此処を捜索してみる」
「仕事熱心だね、雪ちゃんてば」
「ルパンもでしょ。大泥棒さん」
互いの足は先の通路へと踏み出す。
「でもオレの予想通りなら、その幽霊ってやつはホテル側が仕掛けた偽物だと思うけどなぁ」
「じゃあその急に出てきた室内の霧は?どう説明するの?」
「あれか?ま、ドライアイスでも使ったんだろ」