第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)
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「へ〜ぇ。幽霊ねぇ…幽霊はアナクロだとかなんとか仰ってませんでしたっけ?次元さんよォ」
「笑い事じゃねぇぜルパン。見えねぇはずのもんが見えちまったんだ」
「どうせ雷でパニクって目の錯覚でも起こしたんだろ」
「なんでまず否定から入るかな、毎回こういうもの追ってるって言うのに」
ソファに腰を落ち着けたものの、にまにまと笑うルパンと白けた表情の神田に、次元と雪は異議を申し立てた。
「俺はオカルトなんか信じちゃいねぇ。つまり俺の頭がどうにかなっちまったってことだっ」
「信じるも信じないも勝手だけど、確かに私も同じものを見たから。二人揃って頭が可笑しくなることなんてあるっ?」
恐怖を薄れさせる為か、なみなみと注いだワインを大口で飲み込んでいく次元。
「お前さんは仕事のし過ぎだ。ホラよ、少しは休めっ」
「そうじゃなくて…あ、このワイン美味しい」
「結局飲むのかよ」
「雪も次元と同じで幽霊は苦手らしいなぁ…」
次元に差し出されたワインを、ルパンに誘われた時とは違いあっさりと口にする雪もまた、恐怖を薄れさせたいのかもしれない。
型はまるで違えど似た者同士な二人に、部屋を物色していた手を止めてルパンも向かいの椅子へと腰を下ろした。
「でも二人のお陰で確信したぜ」
「何を?」
「まだ此処に宝はある、ってな」
「…どういうことだ?」
神田の問いに、ルパンが懐から取り出したのは例の心霊ガイドブック。
「実はこのガイドブックに書かれている客達の心霊体験には、共通点があってな」
唐突に放られたそれを、ぱしりと神田の手が受け取る。
ドッグイヤーで目印を付けられたページを開けば、ホテルCieloの心霊に関する記述が掲載されていた。