第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)
「タオルはわたくしがお届けしますので、部屋でお待ち下さいますか」
「あ、はい…それとアルドルフォさん」
「他に何か?」
「あの、このホテルのことで幾つかお尋ねしたいことが…有名な心霊ホテルだとお聞きしたんですが」
「ええ。その噂を聞き付け訪れるお客様も少なくはありません。…しかし無闇に顔を突っ込むのは止めた方がよろしいですよ」
「え?」
ぬぅ、と身を屈め再び顔を近付けるアルドルフォに、思わず雪は息を呑む。
「興味本位で突っ込んだばかりに、霊に祟られ悍ましい体験をした、という者も少なくはありません故…」
「は…はは……ご冗談ですよね?」
「この顔が冗談を言っているように見えますか?」
「(見えません!)…へ、部屋に戻ります」
「なんだ、それくれぇで諦めるのか?仕事なんだろ?」
「そういう次元だって、それくらいで煙草諦めるの?ルパン以上のヘビースモーカーな癖に」
「一丁前に言いやがる…」
そこで二人は気付いてしまった。
第六感が働いたとでも言おうか。
どうやら心霊の類が得意でないのは、お互い様らしい。
「仕事は自分の目で調査するよ、ユウと一緒に。ということで戻ろう」
「仕方ねぇ…ルパンの煙草でも貰うとするか」
そうと悟れば長居は無用。
心霊スポットでも平気な顔をしていられる互いの相方の下へと戻る為に、二人が踵を返すのは早かった。