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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)



「でもいいの?アタシが言うのもなんだけど、女の道を絶つってことは色々な未来も絶つってことよ」



女として宿すことのできる新たな命も、生み出せなくなる。
もし神田が雪とそんな未来を望んでいるならば、それは全く別のものへと変わってしまうのだ。



「…それはあいつが決めることだろ。今まで思い通りに道を進んでこれなかった奴だ。先の未来くらい、好きに歩ませてやっていいだろ」



しかし静かに告げる神田の顔に、迷いは見当たらなかった。
神田だからこそ知っている、彼女の生き方があったのだろう。



「だからあいつが変わるなら俺も変わる。それだけだ」



それは確かな、雪へと向けた想いの形だった。






























「…ユウが、そんなことを…?」

「アタシも吃驚しちゃったわ。あれは雪ちゃんを想うからこその姿勢だったから。つい、絆されちゃったのよねぇ」



しみじみと語るボネールさんの後の言葉は、あまり頭に入ってこなかった。

…ユウは、本当に私が男でも女でも構わず受け入れてたんだ。
自分の意志ばかりかと思ってたけど…その下には、私への想いがあったんだ。
わかり難い、ユウらしい不器用な思いやりが。



「雪ちゃんも受け入れ難いところがあったかもしれないけれど、あの子なりに雪ちゃんを想って向けた行為なのよ。だからそう嫌わないであげて」

「………」



優しいボネールさんの声にも、胸がじんとくる。
他人から聞かされるユウの愛情は、想像以上に衝撃だった。
嫌な驚きじゃない。
胸が、熱くなる。



「…また流されちゃうなぁ…」



これじゃあまた、ユウの思う壺だ。
熱くなった想いに、今までの蟠りなんて押し流されて。
愛されてるんだって実感で、心はいっぱいになる。



「いいじゃない、流されたって。恋は盲目、よ。雪ちゃん」



ボネールさんの優しい声に背を押される。
気付けば立ち上がっていた。



「ありがとうございます、ボネールさん」



それだけ真摯にユウと私のことに向き合ってくれて。
頭を下げれば、長い付け睫を揺らしてボネールさんは笑い返してくれた。

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