第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
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「嫌よ。なんでそんなこと教えてあげなきゃならないの」
「あ?」
「凄んだって無駄よ。それはアンタのただの欲望でしょう?雪ちゃんの立場を一つも考えてないわ。そんな男に抱かれるなんて可哀想よ、絶対に嫌」
「………」
「そ、そんな怖い顔したって教えないものは教えないわよッ?抱きたいなら女に戻るのを待つくらいの姿勢見せてあげなさいよ。それが愛する者への男の在り方というものでしょう!」
ミシリと掴まれた肩が悲鳴をあげる。
それでも退かないボネールに、神田は手の力を緩めた。
呆気なく放すと、溜息を一つ。
「じゃあいい自分で調べる」
「待て待て待ちなさいッ」
途端にくるりと踵を返して去ろうとする体を、今度はボネールの手が慌てて止めに入る。
「人の話を聞かない子ね!それでアンタの欲望は解消されても、雪ちゃんはどうなるのッ少しは忍耐というものを覚えなさい!」
「もう充分待った。あいつが戻る気がねぇんだから仕方ねぇだろ」
「だからって体にものを言わすなんて、下手したら強姦と同じよ。本当に節操のない子ね…!」
「煩ぇ。強姦なんてするか」
掴まれた腕を上げて、ボネールの手を振り払う。
振り返った神田の顔は、眉間に皺を刻んでいた。
「あいつが男のまま生きるってんなら、それでもいい。あいつの人生だ」
「……本気で言ってんの?それ」
「男でも女でも雪は雪だろ。オカマのお前がそれを否定するのかよ」
「………」
「あいつが男に変わるなら、俺も変わる必要がある。どうせあいつも男同士のヤり方なんて知らないはずだ。そんな状態で抱いても不安にさせるだけだろ」
「ち、ちょっと待って。じゃあアンタは本当に、今の雪ちゃんを認めて恋人にしていくってこと?」
「くどい。ハナからあいつは俺のもんだ、認めるも何もあるか」
乱暴な物言いだが、そこにはボネールの予想していなかった神田の意志があった。
思わずまじまじと顔だけ長所の美形を見やる。
(顔だけの男かと思ってたけど…そうでもないのかもしれないわねぇ…)
痺れを切らして起こした自暴自棄な決意ではない。
それは今の雪を受け入れて、生きていく覚悟をした決意だ。