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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)



「御礼なんていいのよ。今そこに生まれた雪ちゃんの思いを告げる相手は別にいるでしょ?ホラ、」

「?」



タイミングが良い、と笑うボネールさんが目線で促した先。
ラフな胴着で修練場へと入ってくるユウの姿があった。

じっと見つめてしまえば、簡単に視線は合う。
胸がとくりとまた熱くなる。



「あの、ボネールさん…」

「いってらっしゃい♡」



皆まで言わずとも快く送り出してくれるボネールさんにもう一度頭を下げて、ユウの下へと向かった。
自然と小走りになる足。
偶然居合わせただけのユウは、当然のように足を止めて待ってくれた。
そんな些細な姿にも想いが溢れる。

ああ、好きだなぁって。
あの人が愛しいなって。
そんな想い。

ボネールさんから二人のやりとりを聞かされたことを告げれば、きっとユウは嫌な顔をするだろう。
だから、そのことを告げる代わりに伝えるんだ。



「ユウっあのね───」



ユウと出会えたことで、どれだけ私の未来が幸せなものに変わったのかって、ことを。






























昔はよく「男だったら良かったのに」なんて思っていた

男だったら、小母さん達に叩かれ罵倒された毎日も、耐え切れたかもしれない
男だったら、"女の癖に"と今まで下に見てきた男達も、見返せたかもしれない

自分を卑下したい訳じゃない
女であることにも不満はない
ただ、男であったなら、と
憧れる程に、敷かれていたのは躓く道だった

何かと性別で生まれる結果を目の当たりにすることが多くて、我武者羅に走っていないと、すぐに転んでしまう
それが私の生きている世界だ


それでも


在りのままの、今の私を受け入れてくれる人達がいて
在りのままの、今の私を望んでくれる人達がいる

結局私の立場は何も変わらないし、これからも我武者羅に走り続けていくんだろう
だけど性別の枠には、もう焦がれないかもしれない


だって

どちらであっても、変わらず愛を向けてくれる人を見つけられたから










fin.

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