第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
「でももう女に戻ったのに…」
「性別なんて関係ないわよ〜。偏見なんてやぁね。誰だって後ろの一つや二つ、掘られてる人生よ?」
後ろは二つもありません。
偏見は…しない、けれど。
ただ自分にとって未知の世界だったから、色々と抵抗があっただけ。
「それにあの子のことだから、女の雪ちゃんの体もちゃんと満足させてあげてるでしょ?」
「………」
否定は、しない。
昨日だって後ろだけじゃなく、本来私が気持ちよくなれるところも念入りに責められ…って何思い出させてるんですか!
あああもううう!
「もう諦めたから、これ以上厄介なことは教えないで下さい…」
諦めの境地に陥った体を脱力させる。
今更起こってしまったことは訂正できない。
ならせめて、これ以上厄介事にならないようにしないと。
「厄介、ねぇ…」
膝の上に脱力した私の頭に、ボネールさんの手が触れる。
ユウよりも大きな手で、ちょんちょんと触れる程度に撫でられた。
「ねぇ雪ちゃん。顔だけが長所のようなあの子が、男同士のセックス法を訊ねて来た時はね。アタシ、断ろうとしたのよ」
顔だけが長所…確かに一理ある。
「雪ちゃんの性別が変わってしまって、ヤキモキしてたのは感じてたから。ほら、あの子って"こう"と決めたら他人構わず突き進むところあるでしょ?雪ちゃんの体は男でも、心は以前の雪ちゃんと同じまま。そんなちぐはぐな状態で未経験な責め方をされたら、怖がるんじゃないかと思って」
ボネールさんの言葉はあの時の私の心境を的確に捉えていて、驚いた。
そういえば…オカマさんだけど、パリ独房でも私の心を汲み取ってユウに喝を入れてくれたもんな…。
「それは結局あの子の独り善がりにしかならない。抱きたいなら、女に戻るのを待ちなさいって諫めたの。それが男と言うものよって」
「ボネールさん…」
思わず目元が潤む。
なんて良いことを言っ………あれでも私しっかり抱かれたよね?
男の体をユウに。
「じゃあなんで教えたんですか余計なこと」
潤んだ雫も引っ込んでしまう。
ジト目で隣を見上げれば、ボネールさんは眉尻を下げて笑った。
「あの子の姿勢に、絆されちゃったのよねぇ」