第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
「でも…私、もう男じゃないよ…?」
「男のお前が見たいんじゃない。あの時感じてた雪の姿が見たいだけだ。…それの何が悪ィんだよ」
「っ…(ずるいよ、本当、そういうところ)」
ぶっきらぼうに告げてくる真っ直ぐな言葉は、容赦なく雪の心を揺らす。
じんわりと体の奥底から熱が浮かび上がってくるような感覚は、間違いなく神田から貰ったものだ。
行為ではなく、その言葉で。
届いたのは、体と心に。
「ユウの………変態」
「あ"?」
ぽつりと神田の耳に届いた儚い声は、罵るものと同じもの。
更にきつく眉間に皺を寄せ睨み付けた神田の目は、しかしすぐに鋭さを失くした。
「物好きにも程があるよ…」
両手で顔を隠して、ぽそりぽそりと力なく告げてくる。
その唇から零れ落ちる音は、儚くか細い。
見え隠れする頬はほんのりと赤く染まり、男である雪の体を初めて感じさせた時の姿と重なった。
あの時と同じ。
ぞくりと背中を走る高揚感のようなもの。
それは尽きることのない神田の欲を溢れさせるのだ。
「…物好きでいい」
男であった頃より細くなった手首を掴む。
その手を退けば、力をかけずとも隠されていた雪の顔を拝むことができた。
ゆっくりと退く手の下から覗いたのは、恥じらい染まる愛らしい顔。
どことなく泣きそうな表情には、征服欲が駆り立てられる。
なのにどこまでも甘やかしたくもなる、不思議な感情が湧き出るのだ。
「雪のその反応が見られるならな」
啄ばむような愛情のこもったキスを一つ。
素直に受け入れる雪の目が、じんわりと潤む気配。
そうなればもう止められない。
目の前の体を隅々まで己のものに染めたくなる。
「ぅ…ド変態…」
「変態で結構」
「ドS…」
「安心しろ、自覚はある」
「そんな女顔なのに…」
「それ関係あるか」
尚も弱々しい抵抗を見せる雪の唇を、同じ唇で塞ぐ。
手首を握っていた手はいつの間にか繋がれ、指と指が絡み合う。
おずおずと握り返してくる小さな手には、言いようのない愛おしさを感じて。
口付けを深いものへと変えながら、神田の体もまたベッドへと沈んだ。