第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
「じ、じゃあさっきのやりとりは?私が女に戻ってほっとしてたんじゃ…っ」
「そんなこといつ言った」
「やっとかって、そう言ってたじゃん…!」
「ああ。あれはディリの任務がクソ下らなかったからだ。あんな任務なら糸目じゃなくお前がファインダーとして就いてた方がマシだった」
「えぇえ…っじゃああれは私が元に戻ったからじゃなくて」
「久々にお前の補充ができたから」
「えぇえ…!(嬉しいけどなんか嬉しくない!)」
淡々と言い切る神田は、どうにも嘘をついているようには見られない。
途端に手足をばたつかせて逃げ出そうとする雪だったが、女の力では尚のこと逃れられなかった。
「いい加減諦めろ」
「っお、男じゃないからッ体の仕組みが本当に変わってるから…!この間みたいにはいかないよ…!」
「それはやってみねぇとわかんねぇだろ」
「わかるわかる!もうすっごいわかる!女も男も体験したからわかるよ!女は男より精神面で気持ちよくなれないと、体も反応しな──」
「なら、」
「っわ…!?」
強い力で抱きかかえられたかと思うと、ぼふりと今度は背中からシーツに沈まされた。
反射的に瞑った目を開けば、すぐ目の前には神田のドアップ。
長い睫毛が肌に影を落とす様まで、よく見える。
「心も余すことなく気持ちよくしてやる」
そう告げた薄い唇が、触れる程度に雪の唇と重なった。
神田の意思の中にはきちんと雪への想いがある。
それが伝わったからこそ、雪は困惑した表情を浮かべる他なかった。
そうも想ってくれるのなら、何故こうも抵抗することを押しきるのか。
「ふ、普通じゃ駄目なの…?」
「普通ってなんだよ。俺には雪を抱くことに変わりない」
「っ…でも、あ、あれは男だったから仕方なく…」
「仕方なく抱かれて散々善がった訳か」
「う。だからそれ言わないでって…しつこいっ」
「…仕方ねぇだろ」
赤い顔を背ける雪の首筋に、ひやりと長い指先を置いて。
「あの時のお前がまた見たいって思うから、しつこくもなるんだよ」
ぼそりと告げた声はどこか荒い。
感情の混じる神田の声に思わず向けた雪の目に映ったのは、居心地悪そうに眉を潜めて目線を逸らす、物珍しい彼の姿だった。