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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)



「あの時のユウも苛立ってたなぁ…無言の負のオーラが凄かった。私が不調なのわかってたからだろうけど。でも私も半ば意識飛んでたから、そんなユウに構う余裕もなくて。ある意味楽な任務だったかも」

「…楽なもんかよ。お前、死にそうな顔してたじゃねぇか」

「そりゃあ高熱出てたからね。でも任務内容は楽だったでしょ。結局情報はただの噂で、成果は何もなし。今回の任務と一緒だよ」



振り返れば自然と鮮明に思い出せた。
意識は朦朧としていたはずなのに、何故そうもはっきり憶えていたのか。



(多分、いつものユウとは違ったからだろうなぁ)



少しでもドジを踏めば、散々罵声を飛ばされ拳骨を落とされていた日々。
しかしその任務時だけは、暴力らしい暴力を受けはしなかった。
びしびしと肌を突き刺すような痛い視線は感じていたが、小言くらいで怒鳴る声も聞かなかったように思う。
歩調は一切緩めず振り返りもしない神田の後をついて行くだけで精一杯だったが、どうにか置いていかれはしなかった。



「あの任務の後、司令室で成果無しの報告する時も、ユウは今日みたいに怒鳴ってなかったでしょ。ぐちぐちコムイ室長に文句は言ってたけど」



いつもは雪が神田の代わりに全て担っていた任務報告。
だがまともに話すことも儘ならない程に満身創痍だった雪に、黙って同行した神田はコムイへと代わりに報告と文句を告げた。



「憶えてねぇ」



きっぱりと余所を見て告げる神田は、どこまでもらしい返事。
それから雪へと向けられた目は、興味のない色はしていなかった。



「お前がその後、ぶっ倒れたことは憶えてる」

「そうなの?」

「任務が終わった直後だ。司令室を出た後倒れただろ」

「でもあの時私を運んでくれたのって、ユウじゃなかったよね?」



後に聞いた話では、神田はさっさとその場から去り、代わりに警護班が雪を運んでくれただとか。
神田にはいつものように興味なく一蹴されたとばかり思っていたが、そうではなかったらしい。

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